『Starlight Party』
2006年4月29日 お題とてもよく晴れたある夜のこと。
俺たちは、何故か神殿の屋根の上にいた。
いるのは神殿長、リィン、俺の三人。
「さ、早く終わらせちゃおう。」
「そうだな。」
「あのー・・・・・俺何やるか知らされてないんデスけど。」
「あ、言ってなかったっけ?」
「ああ、言ってない・・・・・です。」
「別に今はライトいないんだし敬語必要ないと思うんだけどなぁ。」
「良いからとっとと説明してやれ。」
「あ、それもそうだね。今日はお客さんが来るんだけど、その人がお酒飲むから、一緒にお酒飲める人が必要でね。」
「あ、そういうことか。」
ぽん、と手を打って納得する。
そうか、客が・・・・・・客が?
「その客って、屋上に来るのか?」
「今日はね。」
どういう客なんだろう。
鳥人族とか?
「でも単なる荷物もちとかじゃなくて良かったですよ。」
背負ったままだった荷物を下ろすと、重そうな音がした。
一応慎重に下ろしたつもりだったんだけどな。
「重かったでしょ、ごめん。」
「別に大したことないって。これが酒?」
「そう。」
「随分大量だなぁ・・・・・。」
「あの人凄く飲むから。俺にもやたらと飲ませようとするんだよ?いつも他の人が止めてくれるんだけど。」
「誰なんだ?」
イルは暫く首を傾げてから、人差し指をぴんと立てて言った。
「ウイング君の上司・ジャスティスさん。」
そういわれて、ウイングのことを思い出す。
何度かそのジャスティスという人について話していたような気もするが、一度もいい話は聞いたことが無い。
だからリィンが不機嫌そうな顔をしているんだろうか?
一瞬そう思ったが、すぐにその考えは打ち消した。
リィンはいつだって不機嫌だ。
「そろそろ来る頃かなぁ。」
イルは何故か少し楽しそうだ。
「イル、そのジャスティスって人、どんな人なんだ?」
「う〜ん・・・・・いい人じゃないのは確かかな。」
「イルの基準で?」
「多分、よっぽど特殊な人でないと、あの人のことを『いい人』っていえないと思う。でも、それはそんなに気にする必要ないだろうし。」
「そういうもんか?」
俺が尋ねると、イルは何故か楽しそうに微笑んだ。
そして、俺に白い指をぴっと向けて。
「そういうものだよ。例えばブライト、リィンは『いい人』っていえる?」
「天地がひっくり返っても無理ですね。」
迷わずに即答した。
当のリィンは興味なさそうに本に視線を向けていた。
今夜は星と月が明るいが、流石にそれだけじゃ読めないと思っていたのか、ランプを持参していた。
基本的にめんどくさがりなリィンの、本に対する想いが垣間見えた気がした。
感心のような呆れのような曖昧な思いを抱いていると、身体に妙な違和感が走った。
「来たみたいだ。」
イルがそう言い終えると同時に、いくつかの気配が現れた。
その中で、見覚えがあるのは一人だけ。
「ウイング。」
「・・・・・お久しぶりです。」
ウイングの顔色が悪い気がする。
月光の所為ってことにしとこうか。
「よぉ久しぶりだな、インペリアル。」
思わずぞくりとするような魅惑的な低い声。
ウイングの隣に立つ男の声らしい。
闇のように黒い髪はイルと同じくらい長い。
血よりも赤い瞳は、仄かに光っているような気さえする。
肌は白く、全体的に何か不吉な感じがする。
「ジャスティスさん、久しぶり。今日はウイング君も一緒?」
「ああ。こいつが俺といるのを嫌がっていたからな。連れてきてやった。」
嫌がらせかよ。
「ジャスティス、あんまり彼を苛めちゃ駄目だって。君がどうしようもないほどサディストってことは知ってるけどさ。」
なんだか白い人がからかうように言う。
ふわっとした白い髪は肩まであって、肌は青白く、まとう服も白い。
「スノウシェイドさんも久しぶり。レイト君は元気にしてる?」
「うん。あ、そうそう冷人から君に伝言。『五月蠅いのがそっちに行くが、とりあえずよろしく頼む』だって。」
「うん、わかった。今日は3人?」
「そ。シリウスたちがちょっと都合悪くなって。」
シリウスって誰だ?
とりあえず、今日来た人は、ウイング、ジャスティス、スノウシェイド、というらしい。
「それより、そっちのは誰だ?」
「名前ならブライトだ。」
「ブライト?ああ、そういえばイルが言っていたな。腕のいい剣士だと。」
「それは光栄だ。」
剣を扱う俺にとっては、最大級に近い褒め言葉だ。
例えお世辞でもそれなりに嬉しい。
「リィン君は久しぶりだね。」
「・・・・・そうだな。」
「相変わらず不機嫌そうなツラしてるな。」
リィンは俺に絡むな、と言いたげな顔をしている。
何で来たんだろう。
「イル、何でリィンは来たんだ?」
「二人がリィンにも会いたいって言うから、必死に頼み込んだ。『歴史と神話の歩み』っていう本で。」
「・・・・・結局本か。」
リィンはどれだけ本が好きなんだ?
「まぁいい。とにかく飲むぞ。」
「ジャス、イルにあんまりお酒飲ませちゃ駄目だからね。」
「なんだと?それじゃ意味が無いだろうが。」
「ジャスティス様!」
「あのサディストは放っておいて、君も飲もう?」
白い人に突然肩を叩かれた。
そして、コップを押し付けられる。
「あ、どうも・・・・・えっと、スノウシェイドさん?」
「いいにくかったらスノウで良いよ。」
にこにこと楽しそうに笑っている。
つられて笑いながら空を見上げた。
満天の星空だ。
星に囲まれた月がやたらと綺麗だ。
「まぁ、夜空を見ながら酒ってのも、たまには悪くないか。」
「でしょ?いつも室内で飲んでるからね。たまには開放的に飲もうと思って。」
「わぁああああ!」
悲鳴のような声が聞こえて、その元を辿ると、ウイングがジャスティスに寝技のような物をかけられていた。
「やっぱりジャスティスさんとウイング君は仲がいいね。」
いつの間にかスノウさんの隣にいたイルがほのぼのと呟いた。
「そうでしょう?」
「まぁ確かに楽しそうだな。」
ジャスティスって人だけは。
ふとリィンの姿を探してみると、イルの隣で本を読んでいた。
飲まないのか?と言おうとして気づく。
リィン、未成年だったな。
とりあえず星空の下で、俺たちはほのぼのと酒を飲んだ。
終わり。
一年間に50のお題より。
不完全燃焼です。
『スノウシェイド』は雪影のことです。
俺たちは、何故か神殿の屋根の上にいた。
いるのは神殿長、リィン、俺の三人。
「さ、早く終わらせちゃおう。」
「そうだな。」
「あのー・・・・・俺何やるか知らされてないんデスけど。」
「あ、言ってなかったっけ?」
「ああ、言ってない・・・・・です。」
「別に今はライトいないんだし敬語必要ないと思うんだけどなぁ。」
「良いからとっとと説明してやれ。」
「あ、それもそうだね。今日はお客さんが来るんだけど、その人がお酒飲むから、一緒にお酒飲める人が必要でね。」
「あ、そういうことか。」
ぽん、と手を打って納得する。
そうか、客が・・・・・・客が?
「その客って、屋上に来るのか?」
「今日はね。」
どういう客なんだろう。
鳥人族とか?
「でも単なる荷物もちとかじゃなくて良かったですよ。」
背負ったままだった荷物を下ろすと、重そうな音がした。
一応慎重に下ろしたつもりだったんだけどな。
「重かったでしょ、ごめん。」
「別に大したことないって。これが酒?」
「そう。」
「随分大量だなぁ・・・・・。」
「あの人凄く飲むから。俺にもやたらと飲ませようとするんだよ?いつも他の人が止めてくれるんだけど。」
「誰なんだ?」
イルは暫く首を傾げてから、人差し指をぴんと立てて言った。
「ウイング君の上司・ジャスティスさん。」
そういわれて、ウイングのことを思い出す。
何度かそのジャスティスという人について話していたような気もするが、一度もいい話は聞いたことが無い。
だからリィンが不機嫌そうな顔をしているんだろうか?
一瞬そう思ったが、すぐにその考えは打ち消した。
リィンはいつだって不機嫌だ。
「そろそろ来る頃かなぁ。」
イルは何故か少し楽しそうだ。
「イル、そのジャスティスって人、どんな人なんだ?」
「う〜ん・・・・・いい人じゃないのは確かかな。」
「イルの基準で?」
「多分、よっぽど特殊な人でないと、あの人のことを『いい人』っていえないと思う。でも、それはそんなに気にする必要ないだろうし。」
「そういうもんか?」
俺が尋ねると、イルは何故か楽しそうに微笑んだ。
そして、俺に白い指をぴっと向けて。
「そういうものだよ。例えばブライト、リィンは『いい人』っていえる?」
「天地がひっくり返っても無理ですね。」
迷わずに即答した。
当のリィンは興味なさそうに本に視線を向けていた。
今夜は星と月が明るいが、流石にそれだけじゃ読めないと思っていたのか、ランプを持参していた。
基本的にめんどくさがりなリィンの、本に対する想いが垣間見えた気がした。
感心のような呆れのような曖昧な思いを抱いていると、身体に妙な違和感が走った。
「来たみたいだ。」
イルがそう言い終えると同時に、いくつかの気配が現れた。
その中で、見覚えがあるのは一人だけ。
「ウイング。」
「・・・・・お久しぶりです。」
ウイングの顔色が悪い気がする。
月光の所為ってことにしとこうか。
「よぉ久しぶりだな、インペリアル。」
思わずぞくりとするような魅惑的な低い声。
ウイングの隣に立つ男の声らしい。
闇のように黒い髪はイルと同じくらい長い。
血よりも赤い瞳は、仄かに光っているような気さえする。
肌は白く、全体的に何か不吉な感じがする。
「ジャスティスさん、久しぶり。今日はウイング君も一緒?」
「ああ。こいつが俺といるのを嫌がっていたからな。連れてきてやった。」
嫌がらせかよ。
「ジャスティス、あんまり彼を苛めちゃ駄目だって。君がどうしようもないほどサディストってことは知ってるけどさ。」
なんだか白い人がからかうように言う。
ふわっとした白い髪は肩まであって、肌は青白く、まとう服も白い。
「スノウシェイドさんも久しぶり。レイト君は元気にしてる?」
「うん。あ、そうそう冷人から君に伝言。『五月蠅いのがそっちに行くが、とりあえずよろしく頼む』だって。」
「うん、わかった。今日は3人?」
「そ。シリウスたちがちょっと都合悪くなって。」
シリウスって誰だ?
とりあえず、今日来た人は、ウイング、ジャスティス、スノウシェイド、というらしい。
「それより、そっちのは誰だ?」
「名前ならブライトだ。」
「ブライト?ああ、そういえばイルが言っていたな。腕のいい剣士だと。」
「それは光栄だ。」
剣を扱う俺にとっては、最大級に近い褒め言葉だ。
例えお世辞でもそれなりに嬉しい。
「リィン君は久しぶりだね。」
「・・・・・そうだな。」
「相変わらず不機嫌そうなツラしてるな。」
リィンは俺に絡むな、と言いたげな顔をしている。
何で来たんだろう。
「イル、何でリィンは来たんだ?」
「二人がリィンにも会いたいって言うから、必死に頼み込んだ。『歴史と神話の歩み』っていう本で。」
「・・・・・結局本か。」
リィンはどれだけ本が好きなんだ?
「まぁいい。とにかく飲むぞ。」
「ジャス、イルにあんまりお酒飲ませちゃ駄目だからね。」
「なんだと?それじゃ意味が無いだろうが。」
「ジャスティス様!」
「あのサディストは放っておいて、君も飲もう?」
白い人に突然肩を叩かれた。
そして、コップを押し付けられる。
「あ、どうも・・・・・えっと、スノウシェイドさん?」
「いいにくかったらスノウで良いよ。」
にこにこと楽しそうに笑っている。
つられて笑いながら空を見上げた。
満天の星空だ。
星に囲まれた月がやたらと綺麗だ。
「まぁ、夜空を見ながら酒ってのも、たまには悪くないか。」
「でしょ?いつも室内で飲んでるからね。たまには開放的に飲もうと思って。」
「わぁああああ!」
悲鳴のような声が聞こえて、その元を辿ると、ウイングがジャスティスに寝技のような物をかけられていた。
「やっぱりジャスティスさんとウイング君は仲がいいね。」
いつの間にかスノウさんの隣にいたイルがほのぼのと呟いた。
「そうでしょう?」
「まぁ確かに楽しそうだな。」
ジャスティスって人だけは。
ふとリィンの姿を探してみると、イルの隣で本を読んでいた。
飲まないのか?と言おうとして気づく。
リィン、未成年だったな。
とりあえず星空の下で、俺たちはほのぼのと酒を飲んだ。
終わり。
一年間に50のお題より。
不完全燃焼です。
『スノウシェイド』は雪影のことです。
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