ご注意下さい。さらっと微妙なネタです。
『つくりかた。』
子どもの純粋な一言というのは、時としてどんなものよりも始末に終えないものだと思う。
「ねぇねぇ、赤ちゃんって、どうやったらできるの?」
キラキラと輝く深緑の瞳に見つめられ、返答に困った。
助けを求めようと視線を彷徨わせると、ぽかんと口を開けたライトの姿が見えた。
リィンは黙って本を読んでいる。
聞こえていないはずは無いと思うのだが、ただ単に関わる必要は無いと判断したのだろう。
「ぼ、僕もしりたい・・・・・おしえて?」
今度は赤い瞳に見据えられる。
どちらも純粋な視線だ。
二人とも知的好奇心に旺盛だから、いずれ来るだろうとは思っていたけど。
「何の赤ちゃん?」
「ヒトの赤ちゃん!」
「そう。ヒトの、どの種族の赤ちゃんがいいの?」
二人の頭をよしよしと撫でつつ、尋ねた。
セイもハザードくんもきょとんとして首を傾げる。
可愛いけど、15歳。
「ヒトはね、種族によって赤ちゃんの生まれ方が違うんだよ。」
「えー・・・・・・じゃぁ、うーん・・・・・。」
二人は暫く小さな声で相談をしてから、声をそろえて言った。
「リィンとかブライトみたいなヒトの赤ちゃん。」
つまり、普通の人間族ってことか。
困ったなぁ・・・・・。
今この場で説明するのは、大変だ。
二人とも精神的に物凄く幼いとは言え、実年齢は15歳。
天使が連れてくるとか、そういう伝説的なものを教えるのは流石に、ちょっと気が引ける。
かといって、しっかりと説明するのは難しい・・・・・・というか。
「実は、俺も知らないんだけど・・・・・。」
「・・・・・は?」
ライトが呆然と呟いた。
「神殿に来てから、いろんな勉強を教えられて、その中に一応その話もあったんだけど、何故か人間族と、それと同じ種族のだけは教えてもらえなかったんだよ。」
「『神殿長』には珍しくも無い現象だ。周囲の人間がそういったものから遠ざけたがるから、教えないということがよくある。」
リィンが本から目を離さないまま補足してくれた。
あ、俺だけじゃなかったんだ、よかった。
「・・・・・マジですか。」
ライトが顔を抑えて呻いた。
このお子様たちをどうすれば良いだろうか。
リィンは元から参加していない。
神殿長はご存知じゃない。
ということで、二人の純粋なお子様は俺をじっと見つめている。
こういう子ども相手だと、どうやって説明すればいいのか分からない。
本当は嫌だけど、この際仕方ない。
相変わらず本から視線をはずそうとしないリィンに目を向けた。
「リィン、助けてくれ。」
「手っ取り早く言えば良いだろう。」
「言えるか!お前だったら言えるのか?」
「言えるが?」
当然というようにリィンが鼻で笑う。
こいつなら、本当に言いそうだ。
「やっぱり、俺が勉強して教えてあげればいいのかな。」
「・・・・・いや、良いです神殿長。俺が何とか二人に説明しますから。」
「できるのか?」
「や、やるさ!えっと・・・・。」
リィンに馬鹿にされてちょっとカッとなりつつ、頑張って考える。
いつまで経っても、全然思いつかなかった。
「もう!じれったいなぁ!ねぇねぇ、どうやったらできるの?やってみせてよー!」
「やっ・・・・・・!!一人でできるかー!!」
顔が一気に熱くなる。
思わず叫ぶと、リィンにはたかれた。
セイがじっと俺を見つめてきた。
「一人じゃできないの?」
「え・・・・・それは、まぁ。」
「じゃ、神殿長と二人でならできるー?」
「で・・・・・できるかぁあああぁああ!!」
「五月蠅い。」
もう一度、今度はさらに強くはたかれた。
頭を抑えつつ顔を上げると同時に、扉が開く音がした。
「どうしたライト?」
ブライトがひょこっと顔を覗かせる。
「ブライト・・・・・助けてくれ。」
「は?」
「ガキ二人が子どもの作り方を聞いてきたんだ。それも人間の。ライトの馬鹿が説明できないから、二人が実際にやって見せてくれと言ってきている。」
「マジか。」
リィンの率直過ぎる説明(ていうか、馬鹿とはなんだ、馬鹿とは!)に、ブライトが軽く驚く。
その間にも、二人はねぇねぇと袖を引っ張ってくる。
「三人ならできるー?」
「いや、三人は要らないな。」
リィンがキッパリと答える。
「・・・・・イルとライトだと、できないの?」
ハザードがこくんと小首をかしげた。
まぁ、間違ってはいないので、頷いておく。
「じゃぁ、イルとリィンならできる?」
悪意のないその言葉に、俺は固まるしかなかった。
「いや、無理だなぁ。ていうか、想像できねぇ。」
「想像するな、気色悪い。」
ブライトの言葉に、リィンがきつくツッコミを入れる。
今ばかりはリィンが正しいと思う。
ツッコミひどいけど。
「じゃぁ、イルとブライトは?」
「・・・・・・できないなぁっていうか、あの、なんつーかさ、構図的にヤバイ。俺けっこう悪人面だし。」
「というか、何故イルは固定なんだ?」
「だって、神殿長お母さんだもん。」
「赤ちゃんって、おかあさんから生まれるんだよね。」
なんだ、それは知ってたのか。
普通に考えれば当たり前だが、この二人だとつい、そういうことも知らないのでは、と思ってしまう。
「それでいくと、父親候補が俺とライトとブライトということになるな。不愉快だから俺は抜かしておけ。」
「また自分勝手なことを・・・・・。」
叫ぶ気力も無く、ため息をつく。
セイたちは、きょとんとしていた。
そして、声をそろえて尋ねる。
「ねぇ、『ちちおや』って何?」
二人の言葉を理解するのに、どれだけの時間を要しただろう。
「・・・・・・お父さんのことだけど・・・・・知らないのか?」
「お父さんって何?何の種族?」
「セイ、『さん』ってつくから、ひとの名前かも。」
「あ、そっかぁ!」
二人は勝手に話を進めていく。
このままだと、物凄くおかしな知識が根付いてしまいそうだ。
不意に、神殿長がぽむ、と手を打った。
「・・・・・じゃ、こうしようか、二人とも。」
「?」
「今日、俺が『お父さん』について教えてあげる。だから、二人とも『お父さん』についてちゃんとわかったら、またライトやブライトに聞きにいこうね?」
「えー。すぐがいいー。」
「もう夜遅いから駄目だよ。早く寝ないと、背が伸びないよ?セイ、ブライトを抜かすんだって、張り切ってるのに、それでもいいの?」
「え、やだ。」
「僕もおっきくなれないのいや・・・・・。」
身長のことを引き合いに出され、二人はおとなしくなった。
ハザードはもともとかなり小柄だし、セイは割と背が高いが、目標が目標だけに、この話題はスルーできないのだろう。
「今日は三人で一緒に寝ようね。寝る前にお話してあげる。」
「ホントにー!?」
「いいの・・・・・?」
「うん。着替えたら俺の部屋においで。」
「はーい。」
無邪気な15歳の少年たちは、おとなしく従った。
急いでそれぞれの部屋に着替えに走る。
途中でハザードが転びそうになったが、多分大丈夫だろう。
「完全に、母親だな。」
リィンが呆れたように呟いた。
「精神年齢的には、母親が必要そうなお年頃でしょ。」
「ま、それもそうですね。」
ブライトと神殿長がくすくすと笑い合う。
リィンは視線を本に引き戻している。
一つ、気になることがあったので、聞いてみることにした。
後悔するかもしれないが、聞かなくても後悔する気がするし。
「リィン、さっき、俺に『手っ取り早く言えば良いだろう』って言ったけど、お前だったらどう言うつもりだったんだ?」
リィンは案の定、不機嫌そうな顔で俺を見据えた。
かと思うと、口元に歪んだ笑みを浮かべる。
俺が驚いているのを愉しそうに見て、ゆっくりと口を開いた。
「『やることやればできる。』これで十分だ。」
確かに、手っ取り早い。
けど、けど・・・・・・・!!
「お前、何考えてるんだー!!!」
「確かに難点はあるな。何をやればいいのかといわれると、いちいち行為を説明せねばならなくなる。それがめんどくさいな。」
「リィン、頼むから、お前だけは絶対に説明しないでくれ。」
「やること?何をやるの?」
神殿長が疑問を口にする。
ものすごく嫌な予感がした。
「そうだな、手っ取り早く言えば――――「リィン!!」
「えー、気になるのに。」
「リムドに許可得てからにしてくださいね、神殿長。」
「えー・・・・・。」
夜、二人にお話をしてあげていたら、いつの間にか『お父さん』の話から脱線して、色々な物語の話になっていた。
そのせいかわからないけど、二人は翌日にはすっかりと赤ちゃんの話を忘れていた。
俺は覚えていたから言っても良かったんだけど、昨日ライトとブライトが疲れていたので、やめようと思った。
けど、どうしても気になって、こっそりリムドにきいてみた。
その後、1時間くらいずーっと説教らしきことをされたのだけは納得いかなかった。
終わり。
中途半端なネタのギャグ。
リィンはさらっと凄いこといえます。
ちらっと出た天使が云々っていうのは、こっちでいう「コウノトリ」のようなものです。
『つくりかた。』
子どもの純粋な一言というのは、時としてどんなものよりも始末に終えないものだと思う。
「ねぇねぇ、赤ちゃんって、どうやったらできるの?」
キラキラと輝く深緑の瞳に見つめられ、返答に困った。
助けを求めようと視線を彷徨わせると、ぽかんと口を開けたライトの姿が見えた。
リィンは黙って本を読んでいる。
聞こえていないはずは無いと思うのだが、ただ単に関わる必要は無いと判断したのだろう。
「ぼ、僕もしりたい・・・・・おしえて?」
今度は赤い瞳に見据えられる。
どちらも純粋な視線だ。
二人とも知的好奇心に旺盛だから、いずれ来るだろうとは思っていたけど。
「何の赤ちゃん?」
「ヒトの赤ちゃん!」
「そう。ヒトの、どの種族の赤ちゃんがいいの?」
二人の頭をよしよしと撫でつつ、尋ねた。
セイもハザードくんもきょとんとして首を傾げる。
可愛いけど、15歳。
「ヒトはね、種族によって赤ちゃんの生まれ方が違うんだよ。」
「えー・・・・・・じゃぁ、うーん・・・・・。」
二人は暫く小さな声で相談をしてから、声をそろえて言った。
「リィンとかブライトみたいなヒトの赤ちゃん。」
つまり、普通の人間族ってことか。
困ったなぁ・・・・・。
今この場で説明するのは、大変だ。
二人とも精神的に物凄く幼いとは言え、実年齢は15歳。
天使が連れてくるとか、そういう伝説的なものを教えるのは流石に、ちょっと気が引ける。
かといって、しっかりと説明するのは難しい・・・・・・というか。
「実は、俺も知らないんだけど・・・・・。」
「・・・・・は?」
ライトが呆然と呟いた。
「神殿に来てから、いろんな勉強を教えられて、その中に一応その話もあったんだけど、何故か人間族と、それと同じ種族のだけは教えてもらえなかったんだよ。」
「『神殿長』には珍しくも無い現象だ。周囲の人間がそういったものから遠ざけたがるから、教えないということがよくある。」
リィンが本から目を離さないまま補足してくれた。
あ、俺だけじゃなかったんだ、よかった。
「・・・・・マジですか。」
ライトが顔を抑えて呻いた。
このお子様たちをどうすれば良いだろうか。
リィンは元から参加していない。
神殿長はご存知じゃない。
ということで、二人の純粋なお子様は俺をじっと見つめている。
こういう子ども相手だと、どうやって説明すればいいのか分からない。
本当は嫌だけど、この際仕方ない。
相変わらず本から視線をはずそうとしないリィンに目を向けた。
「リィン、助けてくれ。」
「手っ取り早く言えば良いだろう。」
「言えるか!お前だったら言えるのか?」
「言えるが?」
当然というようにリィンが鼻で笑う。
こいつなら、本当に言いそうだ。
「やっぱり、俺が勉強して教えてあげればいいのかな。」
「・・・・・いや、良いです神殿長。俺が何とか二人に説明しますから。」
「できるのか?」
「や、やるさ!えっと・・・・。」
リィンに馬鹿にされてちょっとカッとなりつつ、頑張って考える。
いつまで経っても、全然思いつかなかった。
「もう!じれったいなぁ!ねぇねぇ、どうやったらできるの?やってみせてよー!」
「やっ・・・・・・!!一人でできるかー!!」
顔が一気に熱くなる。
思わず叫ぶと、リィンにはたかれた。
セイがじっと俺を見つめてきた。
「一人じゃできないの?」
「え・・・・・それは、まぁ。」
「じゃ、神殿長と二人でならできるー?」
「で・・・・・できるかぁあああぁああ!!」
「五月蠅い。」
もう一度、今度はさらに強くはたかれた。
頭を抑えつつ顔を上げると同時に、扉が開く音がした。
「どうしたライト?」
ブライトがひょこっと顔を覗かせる。
「ブライト・・・・・助けてくれ。」
「は?」
「ガキ二人が子どもの作り方を聞いてきたんだ。それも人間の。ライトの馬鹿が説明できないから、二人が実際にやって見せてくれと言ってきている。」
「マジか。」
リィンの率直過ぎる説明(ていうか、馬鹿とはなんだ、馬鹿とは!)に、ブライトが軽く驚く。
その間にも、二人はねぇねぇと袖を引っ張ってくる。
「三人ならできるー?」
「いや、三人は要らないな。」
リィンがキッパリと答える。
「・・・・・イルとライトだと、できないの?」
ハザードがこくんと小首をかしげた。
まぁ、間違ってはいないので、頷いておく。
「じゃぁ、イルとリィンならできる?」
悪意のないその言葉に、俺は固まるしかなかった。
「いや、無理だなぁ。ていうか、想像できねぇ。」
「想像するな、気色悪い。」
ブライトの言葉に、リィンがきつくツッコミを入れる。
今ばかりはリィンが正しいと思う。
ツッコミひどいけど。
「じゃぁ、イルとブライトは?」
「・・・・・・できないなぁっていうか、あの、なんつーかさ、構図的にヤバイ。俺けっこう悪人面だし。」
「というか、何故イルは固定なんだ?」
「だって、神殿長お母さんだもん。」
「赤ちゃんって、おかあさんから生まれるんだよね。」
なんだ、それは知ってたのか。
普通に考えれば当たり前だが、この二人だとつい、そういうことも知らないのでは、と思ってしまう。
「それでいくと、父親候補が俺とライトとブライトということになるな。不愉快だから俺は抜かしておけ。」
「また自分勝手なことを・・・・・。」
叫ぶ気力も無く、ため息をつく。
セイたちは、きょとんとしていた。
そして、声をそろえて尋ねる。
「ねぇ、『ちちおや』って何?」
二人の言葉を理解するのに、どれだけの時間を要しただろう。
「・・・・・・お父さんのことだけど・・・・・知らないのか?」
「お父さんって何?何の種族?」
「セイ、『さん』ってつくから、ひとの名前かも。」
「あ、そっかぁ!」
二人は勝手に話を進めていく。
このままだと、物凄くおかしな知識が根付いてしまいそうだ。
不意に、神殿長がぽむ、と手を打った。
「・・・・・じゃ、こうしようか、二人とも。」
「?」
「今日、俺が『お父さん』について教えてあげる。だから、二人とも『お父さん』についてちゃんとわかったら、またライトやブライトに聞きにいこうね?」
「えー。すぐがいいー。」
「もう夜遅いから駄目だよ。早く寝ないと、背が伸びないよ?セイ、ブライトを抜かすんだって、張り切ってるのに、それでもいいの?」
「え、やだ。」
「僕もおっきくなれないのいや・・・・・。」
身長のことを引き合いに出され、二人はおとなしくなった。
ハザードはもともとかなり小柄だし、セイは割と背が高いが、目標が目標だけに、この話題はスルーできないのだろう。
「今日は三人で一緒に寝ようね。寝る前にお話してあげる。」
「ホントにー!?」
「いいの・・・・・?」
「うん。着替えたら俺の部屋においで。」
「はーい。」
無邪気な15歳の少年たちは、おとなしく従った。
急いでそれぞれの部屋に着替えに走る。
途中でハザードが転びそうになったが、多分大丈夫だろう。
「完全に、母親だな。」
リィンが呆れたように呟いた。
「精神年齢的には、母親が必要そうなお年頃でしょ。」
「ま、それもそうですね。」
ブライトと神殿長がくすくすと笑い合う。
リィンは視線を本に引き戻している。
一つ、気になることがあったので、聞いてみることにした。
後悔するかもしれないが、聞かなくても後悔する気がするし。
「リィン、さっき、俺に『手っ取り早く言えば良いだろう』って言ったけど、お前だったらどう言うつもりだったんだ?」
リィンは案の定、不機嫌そうな顔で俺を見据えた。
かと思うと、口元に歪んだ笑みを浮かべる。
俺が驚いているのを愉しそうに見て、ゆっくりと口を開いた。
「『やることやればできる。』これで十分だ。」
確かに、手っ取り早い。
けど、けど・・・・・・・!!
「お前、何考えてるんだー!!!」
「確かに難点はあるな。何をやればいいのかといわれると、いちいち行為を説明せねばならなくなる。それがめんどくさいな。」
「リィン、頼むから、お前だけは絶対に説明しないでくれ。」
「やること?何をやるの?」
神殿長が疑問を口にする。
ものすごく嫌な予感がした。
「そうだな、手っ取り早く言えば――――「リィン!!」
「えー、気になるのに。」
「リムドに許可得てからにしてくださいね、神殿長。」
「えー・・・・・。」
夜、二人にお話をしてあげていたら、いつの間にか『お父さん』の話から脱線して、色々な物語の話になっていた。
そのせいかわからないけど、二人は翌日にはすっかりと赤ちゃんの話を忘れていた。
俺は覚えていたから言っても良かったんだけど、昨日ライトとブライトが疲れていたので、やめようと思った。
けど、どうしても気になって、こっそりリムドにきいてみた。
その後、1時間くらいずーっと説教らしきことをされたのだけは納得いかなかった。
終わり。
中途半端なネタのギャグ。
リィンはさらっと凄いこといえます。
ちらっと出た天使が云々っていうのは、こっちでいう「コウノトリ」のようなものです。
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