相変わらず投げやりなタイトルです。
さて、明日から期末テストです。
本来なら明日の科目(世界史←超苦手科目)をやらねばならないんですが、学校にプリント置き忘れたという大失態を犯した今、何ができようかって事で。
そんなわけで、今日は意地でも日記小説を終わらせます。
どうせラストスパートさ。
あぁでもそれより、昨日の日記がちょっと恥ずかしい。
内容自体より、アレを短期間でノリノリで書いてた自分が!



『勿忘草の追想』
第七話



身体に力が入らない。朦朧とする意識をどうにか保つ。
「貴方は、事故に遭って以来記憶力が落ちているらしいけれど、原因は分かっているのかな?」
凛とした声が右から聞こえてくる。彼は何を言いたいのだろう。
「・・・・・それは事故のショックだとしか・・・・・・。」
「事故のショック・・・・・それは確かにそうだろうね。」
何を、言いたい。
声が出ない。喉が酷く渇いていた。
「貴方の信念は悪くは無かったんだよ。ただ、貴方は途中で貴方の道を外れてしまったんだ。」
彼らは何を言っているのだ。分からない。否、違う。分かっているのか。記憶が、蘇る。駄目だ、思い出しては駄目だ。思い出せ。思い出すな。戻れない。厭だ苦しい、思い出せ。
「貴方は、自分で記憶力を封じたんだ。」
「そう、事故の衝撃に耐えかねて。」
私が、自分で。厭だ。頭が割れる。私は・・・・・私は、私は私は私は私は私はわたしは私は私は私はわたしは・・・・・・。
「私は、わたしは・・・・・僕はっ!」
親の顔、友人の顔、上司の顔、辛い言葉、優しい言葉、見た風景、押し寄せる記憶。厭だ、怖い。・・・・・何が怖い。今までの記憶じゃないか。厭な思い出もあるけど、楽しい思い出だって。なのにどうして怖い。何が厭なんだ。私は、僕は。

「貴方が恐れていたのは過去の思い出そのものじゃない。」
「貴方は、親友――――中里悟の記憶が消えていくのが、怖かったんだ。」

思考が、停止した。
「人の記憶には限界がある。」
「貴方がこれから生きていくなら新しい記憶が蓄積され、古い記憶はどんどん薄れていく。」
「貴方はそれが怖かったんだよ。」
何も言えなかった。記憶の奔流に、悟の記憶が、押し流されていく。厭だ。厭だ、厭だ。
「貴方が親友を大切に想っていたのは分かるけど、それじゃ悟さんが可哀想だよ。」
「それは・・・・・どういう・・・・・?」
「言っただろう?俺たちは『御祓い』に来たと。」
「それは聞いた。だが、僕は祟られてなどいない。」
「当たり前だ。憑かれたのは、貴方じゃない。」
「憑かれたのは、悟さんだよ。」
「貴方の妄執が、悟さんから自由を奪ったんだ。」
「貴方も憑かれていたのかもしれないけど、だとしたら、それは貴方自身にだ。」

「俺達は―――――貴方を祓う為に来たんです。」

合わさった声を聞いて気づく。二人は、いつの間にか僕の傍から離れていた。顔も何も見えない。それでも、二人が笑っている気がした。
――――怖い。
飛び退くように後ずさって、身を翻して走る。背中を向けるのは怖かった。それでも、その場にいるよりはマシだった。走れば走るほど何かが迫ってくるような気がして、ただ怖くて逃げた。どこまで行けばいいのか、不安になった時、地面が、否、空間が揺れた。何かが崩れる音がする。踵から地の感触が消えたと知覚した瞬間、背中から、闇の中へ落下していった。
それでも、感じたのは恐怖じゃなくて、何故か安堵だった。
そこで、意識が途切れた。



白い網の上で気を失っている男を確認。2人は上手くやってくれたようだ。
「お疲れ。」
「刹那君、ご苦労様。」
<いや、苦労と言うほどではない。>
低く、暗い声が響く。其処には、身の丈2mはゆうにありそうな大蜘蛛がいた。これが刹那君の本性だ。この状態でも、俺たちはやけに恐れられているのだけれど。
「夙夜、ちゃんと起きてるか?」
水無月君が俺たちの横からひょいと顔を出す。明かりはついているからもうきちんと見えるだろう。
「大丈夫、起きてる。」
「あ、いたいたー!」
春夏秋冬君の返事と、元気な声が重なる。その声の方向に軽く手を掲げた。
「悪いね、葵君、真理君。」
「気にしないでいいよ。後で聖が飯作ってくれるんだし。肉じゃが作ってくれ!」
「に、肉じゃが・・・・・時間かかるぞ。」
ジャガイモは・・・・・確か、あったかな。
「で、あたしは此処の空間を完膚なきまでにぶっ壊せばいいんだよな?ちょっとさっきのでストレス溜まってるし、思い切り暴れさせてもらうよ!やりすぎたら止めてね真理!」
「合点承知。」
元気の有り余る葵君に対し、抑揚の無い口調で真理君が答えた。
後は、二人の仕事だ。



あの人も家に戻し、その後、俺の家に全員が集った。葵君と真理君には何か料理を作ると約束したからしょうがないとしよう。舜が泊まりに来ることも珍しくない。春夏秋冬君たちが珍しくいるのは、春夏秋冬君が途中で眠ってしまい、仕方なく一番近かった俺の家に来た、というわけだ。
それなりに時間をかけ、肉じゃがが完成した頃には、新聞配達の人が活動を開始するくらいの時刻になっていた。春夏秋冬君はまだ熟睡しているらしい。
「あ、待ってましたー!」
葵君は元気だ。その声で、うとうとしていた水無月君が起きた。
「あの、先輩。俺、気になってることがあるんですけど。」
「何?」
「あの人、あんなになるまで、その親友の事が大事だったんですか?」
その質問に答えたのは、舜だった。

「あれは、『真実の愛』だったんだよ。」

その言葉で俺は納得できる。しかし、彼らは無理だろう。ていうか誤解を招く。仕方なくフォローする事にした。
「この場合の愛って言うのは、相手を慕うとか、大切に思うだとかそういう意味だ。そういう意味では、あの人が親友に抱いていたのは愛だった、ってこと。」
それは愚直なまでに真っ直ぐで、そして常人とはかけ離れすぎていた。そんなものに正解も間違いも無い。それでも常軌を逸脱しすぎれば、最後に耐えられなくなるのは本人だ。
俺は一度ため息をついて、ポケットに入れていたものを取り出してテーブルの上に投げ出した。
空より濃く、海より薄い、どこかくすんだ青。
勿忘草。
その花言葉は『記憶』『真実の愛』――――そして、『私を忘れないで』
「追憶する事は決して悪い事じゃない。過去を捨てる人間は自分を失ってしまう。でも、それはやり過ぎれば自分を束縛する。」
あの人は夢から覚めた。長い長い、幸せな悪夢から。だからこれからは、その夢も過去になる。
「あの人は幸せでしょうか。」
「それは、俺達が論議してもしょうがない。あの人にもわからないよ。今はね。」
訝しげに首を傾げる水無月君に、舜が微笑みながら教えた。

「生きている間は、自分が本当に幸せかどうかなんてわからないんだよ。総てが終わって追想して・・・・・それが終わってから、その人自身が決める事だから。」

その時、幸せだと思えたら、幸福な事なのだろう。それが他人から見れば悲惨な人生だったとしても。総ては、終わってからしか分からない。いや、終わってからも分からないかもしれない。
テーブルの上に放られた勿忘草は追想でもしているかのように、静かに厳かに存在していた。


終わり。



あとがき・・・・・は、明日書きます。
では、今日はこれにて!

コメント

浅池
浅池
2006年9月11日17:17

バトンだいぶ悩みました; 泣きそうです。
世界史プリント忘れたら終わりですよね……; ジョン先生ですか? あの先生は誰に聞いても「最高!」という感想が返ってくるので、もし習ってるのなら得意教科になるぐらい頑張っちゃって下さい☆ 私も一年の時もっと頑張っていればヨカッタ……orz